瀬戸内海一周旅行19:空気の壁に激突しながら徳島ユースホステルに到着編

我慢の走り

瀬戸内海一周旅行18からの続きです。

昼休憩をしてついでに吉野川沿いでお昼寝までしてしまい、起きたのは1時半くらいになったころでした。ここまではすでにおおよそ120kmほど走ってきています。この日の残りの距離は65kmほどなのですが、道路にある看板に徳島まで50kmと表示されており完全に安心しきっていました。

しかし、昼寝をして起きてみるとあたりの状況は一変していたのです。それまでは背中を押すように吹いてくれていた風が全くの反対方向へと変わってしまっており、徳島までの道が強い向かい風コースへと変貌していたのです。

ここで少し頭を悩ませました。私のいつもの走りは平地は30km/h出ていればいいやと思いあまり頑張りすぎないようにしています。しかし、体重が重たいくせに向かい風には弱く、向かい風が吹いている時は簡単に30km/hをしたまわってしまいます。ですが、宿の場所を探す必要もあり残りの距離はそれほどないので、ここはひとつ頑張ってスピードを維持して徳島まで行ってしまったほうがいいかもしれないとも思います。

本来、この時の風の強さを考えると疲労物質をためないための走りのペースは25~27km/hだったのですが、結局もう少しスピードを速めて30~33km/hを維持して向かい風の中を走ることにしました。翌日に疲れが残ってしまうかもしれないなという心配はありましたが、3日間走り続けて自分で思っていた以上にコンディションが上がってきており普段よりもむしろ元気に走れるようになっていたのです。よくプロ選手はステージレースなどで連日走り続けていくうちにより走れるようになるというコメントをしているのを見かけていましたが、本当に連日走ると体の奥からパワーがわいてくるような感じになるのだなと思いました。

そんなことを考えながら吉野川にそって向かい風の中をひたすら走り続けます。心拍数を見ていると完全にLT値を超えているので疲れが残りそうでしたが脚を動かし続けていました。本当はこのように平地ばかりではなく山に行きたい気持ちもあり、標識に右折すると剣山に行けると書かれているのを見るとついアタックしてしまいそうになりますが、グッと我慢して徳島へと向かいました。ここで1500m級の山岳コースなどに行ってしまえば徳島の宿にたどり着けなくなってしまうからです。

走りながらいろいろなことを考えます。特にこの3日間主に平地を淡々と走り続けてきたことにより、何となく自分に合ったケイデンスというのが分かってきたように思いました。今まではよく言われる90回転や高回転がいいという話をもとに割と回転数を高めに走ってきていましたが、数日続けて走っているうちに無理なく自然に回り続けトルクをかけられる回転数は「82回転」だと感じるようになっていました。不思議なことに80回転では重すぎて、85回転では軽すぎるように感じました。というわけで幅の狭い範囲に収まるように少しずつ変化する勾配に合わせてこまめに変速を切り替えながら走り続けていました。

192号線を東に進み続けると四国の中では大都会と言っていい徳島市に近づいていき、それにしたがってだんだんと信号が増え始めました。川沿いからいつの間にか街中へと風景が変化してきました。そして貞光ゆうゆう館を出発しておおよそ35kmほど走ったころでしょうか。急に失速することになります。壁に衝突したのです。

吉野川市に入り標識では徳島まで15kmと表示されています。このまま休憩なしで走り続けて徳島へ行ってしまおうと考えていました。ですが、走っているとふっと風向きが変わりました。それまでも向かい風で私の行く手を阻んでいたのですが、どうやら完全に真正面から風が吹いていたわけではなく少しだけ斜め前から風が来ていたようです。この風が急に私の体に対して本当に正面からの風へと変化したのです。

その瞬間、本当に壁に衝突したかのように感じました。まさに空気の壁にぶつかったのです。その衝撃はすさまじく、一気に車体が左右に振られて真っ直ぐに走れなくなり、まさに一瞬に32km/hというサイコンの表示が24km/hへと低下していました。何とか体勢を整えて力強くペダルを踏み込もうとしても全くスピードが上がりません。進行方向に対して完全に真正面から風が吹くとここまで空気抵抗がすごいのかと改めて思い知らされました。

今さっきまでは休憩せずに走り切ろうと思っていたのですが、すぐに考えを改めました。少し頑張ってみたもののどうあがいてもスピードが出ないため、コンビニに入り休憩して風向きが少しでも変わるのを待つことにしました。冷たいスポーツドリンクを購入してちびちびと飲みながら道路に立ててあるのぼりが風にはためく様子をしばらく見続けました。

15分ほど休憩していても対して風向きが変わる気配もなかったため、諦めて走り出すことにしました。しばらくは相変わらずスピードが出ませんでしたが、少し走ったら道路が微妙にカーブして走る向きが変わったおかげで強風が斜め前から体に当たるようになりました。ホッと一息ついて少しスピードアップすることに成功し、何とか無事に徳島市までたどり着くことができました。

この日泊まる予定だった徳島ユースホステルを探します。地図を見ていたときにはすぐ近くにあるように思ったのですが、意外と距離があり迷子状態になってしまいます。特に徳島は港になっており、いくつもの小さな川が入り込んでいてその上を橋が架けてあります。見知らぬ土地で確実に目的地にたどり着くためには大きな道を走ろうと思い、192号線を真っ直ぐに行き、29号線で右折すればいいと考えていました。

しかし、この29号線を通って新町川という川を越えようとしたとき橋の入り口の端に立っていた看板にこう書かれていました。「この橋は自動車専用で、歩行者や自転車は通行禁止」と。一瞬無視して橋を越えていこうかとも思ってしまったのですが、前方の橋を見ると確かにかなり急な斜面がついており交通量もあり自転車で通るには危険すぎました。

末広大橋

すぐに橋を通ることはあきらめて側道に移動したのですが、ここからが大変でした。

港独特の入り組んだ道路のため、真っ直ぐにユースホステルのほうへ向かう道が存在しません。いったん引き返して別の道を探していかなければならないのですが、予定していたルートが使えなくなったこともあり、どう行ったものかとあたりをキョロキョロ見渡しながら時々立ち止まって地図を広げて確認する必要がありました。結局徳島駅からユースホステルまでの15kmほどの道に1時間近くもかかってしまいました。

向かい風と迷子状態で体力的にも精神的にもヘロヘロになった状態でようやくユースホステルまであと少しという最後の最後で150m程度の山を登ることになります。よく調べていなくて知らなかったのですが、徳島ユースホステルは海のそばにある小さないくつかの山の上にあったようです。ヘロヘロになった状態ではこの山もなかなか大変なヒルクライムに感じました。もう勘弁してくれと思いながら登り切り、ついにユースホステルへと到着しました。ようやく3日目の185kmという長丁場を無事に切り抜けられてほっとしながら宿の中へと入っていきました。

次回に続きます。

目次

  1. 自転車旅行計画編
  2. 大阪~神戸編
  3. 明石~加古川~姫路編
  4. 恐怖の船坂トンネル編
  5. 備前市を越えて岡山後楽園での昼食編
  6. 一泊目目標地点のの倉敷ユースホステル到着編
  7. 倉敷の街とユースホステル編
  8. 倉敷の歴史について編
  9. 2日目の倉敷~尾道編
  10. しまなみ海道と人との出会い編
  11. しまなみ海道の本当の魅力編
  12. しまなみ海道中盤編
  13. しまなみ海道~鈍川温泉カドヤ別荘編
  14. ロードバイクにやさしい四国の旅館編
  15. 3日目の出発直後に起こったトラブル編
  16. 四国は自転車のメッカになれると感じる讃岐街道編
  17. 10kmアウターヒルクライム編
  18. 昼食・昼寝とその後の状況変化
  19. 空気の壁に激突しながら徳島到着編
  20. 徳島ユースホステルと幻の景色編
  21. 迷いに迷った南海フェリー編
  22. 和歌山港~大阪帰宅編