本州最南端旅行6:椿はなの湯から串本到着編

ラストスパート

本州最南端旅行5からの続きです。

椿はなの湯での休憩を終えて再び走り始めることにしました。ここまでの走行距離がおおよそ200kmでまだ目的地にまで想定以上の50kmが残っていることに精神的に参ってしまっていましたが、時刻はまだ1時半ごろです。当初の予定の2~3時には着きそうにもありませんが、日が暮れるまで走るわけではないと気持ちを切り替えて走り始めることにしました。

出発すると再びアップダウンが待ち受けています。相変わらず少しでも登りになればギアをインナーに落とすためにスピードは遅いですが、淡々と走り続けました。後からツーリングマップルを確認すると実はこの辺りには自転車道があったようです。白浜日置川自転車道というようですが、どんな道か一目見ておけばよかったかなと思ってしまいました。

今回は道に迷わないためにもずっと42号線を走り続けています。この道もツーリングマップルによれば非常に景観のいい走りやすい道として紹介されています。しかし、実際に走っている私の感覚では非常につらい道でした。

というのも、自分が今どこを走っているのか分からなくなるくらい同じような景色が繰り返し出てくるからです。アップダウンコースであり登りを登るとそこにはトンネルがあり車にビビりながらトンネルを越えると下り区間が現れます。そのくだりをお尻が痛くならないようにサドルから少し浮かしながら下っていくと海が見えてきます。この海の景色は小さな湾といった感じで左右にニョキッと突き出した陸地の間から海が見えるものでした。

最初こそはきれいだなと思ったりもしていましたが、この登ってトンネルを越えて下って海を見て、再び登ってトンネルを越えてというループがひたすら続くのです。しまいには「もう海は見たくない。早く着いてくれ」と思ってしまうくらいにまでなってしまいました。

走っても走っても見たことがあるような景色が出てくるため、次第に景色には注意が向かなくなっていきます。頭にあるのは次のような考えだけでした。

「明日からは登りもあるから踏まないように回し続けろ」「ゆっくりでも止まらずに走っていれば必ず着く、心を強くもて」「200kmを越えたら後は気持ちの問題だけだ、頑張れがんばれがんばれ」

こんな感じのことをひたすら考え続けながらペダルを回し続けていました。なるべくポジティブな考えをするように心がけていましたが、次第に疲れがたまってくると「くそー、しんどい、早く着け!」などと声に出して叫んだりしていました。こんなところなら誰も聞いていないからいいやと思って声に出していたのですが、工事現場のおっちゃんが道路のわきから「何の声だ?」と覗き込んできたときには若干恥ずかしい思いもしながらも進み続けます。

が、さすがに昼過ぎからは気温が暑くなってきたのかのどが渇きやすくなってきます。同じような景色ばかり続いていたので、イノブータンランドすさみというところで一休みすることにしました。自販機でジュースを買って日陰に座って小休止です。

イノブータンランドから見た海景色

ふと、海の写真を一枚も撮っていなかったのを思い出してパシャリとしておきます。改めて写真で見ると道は広めで交通量はそこまでなく、景色はいいのでアップダウンをものともせずに走り切れるのであれば非常にいいコースなのだと思います。

が、この時の私はゆっくりと走りすぎていたようでほとんど信号がないにも関わらず1時間に15kmちょい位しか進めていませんでした。このペースで行くとなると到着するのは5時前後になるのであまり長く休憩していてはいけないなと感じました。一息ついてから自転車にまたがります。

ここから先も基本的には先ほどと同じ景色がループし続けます。自分が今どの辺にいるのか、どのくらい進んだのかが感覚的に分かりにくくぶっちゃけた話、あまり印象に残らないということになってしまいました。唯一の目印である串本までの距離を表示した標識がたまにあるのを見ながら進み続けます。

ボーっとしながらも確実に前進し続けた結果、次第に串本までの距離は減っていきます。そして串本までの距離があと10kmを切ったあたりになってようやく終わりが見えてきたと感じました。するとそこにそれまでの景色にはなかった変わった建物が見えてきました。

それは串本海中公園というところでなんと水族館まであるようです。早く着きたいという思いから一度は通り過ぎようとしたのですが、せっかくなので少し見てみようと引き返して立ち寄ることにしました。

串本海中公園

この串本海中公園ではアイスクリームを買い、ベンチに座って食べることにしました。何となく南国の雰囲気が感じられ、本州の中でも特に南の地に来たのだなとこの時になって感じました。水族館に入ろうかとも考えたのですが、そこまで時間をかけてみることもできなさそうなのでやめておきました。適当にブラブラと歩いて景色を楽しみます。

また、ベンチに座りながらツーリングマップルを見ていました。ここまでは基本的にすぐに自分の現在位置が分かるようにスマホのマップを見ていたのですが、改めてツーリングマップルを見るとその情報量の多さに気づきました。スマホで地図を見ると現在地と地形しかわかりませんが、ツーリングマップルではその近くの見どころやその地方のおいしい食べ物などいろいろなことが書きこまれています。わざわざリュックから取り出す必要があり手間なのですが、やはり旅行に来たときにはスマホではなくツーリングマップルを見たほうが楽しめるなとこの時になって気づかされました。

さて、割とゆっくりとしていたようです。気持ちの面でかなりリラックスできました。あとちょっとでこの日の走りも終わりとなります。予想以上の距離になってしまい、どうなることかと思ったのですが、タイヤは結局バーストもパンクもすることなく走り続けられており、筋肉痛や脚の攣り、お尻の痛みなどは出ていないので割といいペース配分で走れているのかなと感じていました。

しかし、この辺りまで来ると一か所だけ異変が現れていました。それは手の平です。どうやら上半身を支える体幹が長時間の走行で疲れ切ってしまい、腕を伸ばしてハンドルに押し付けることによって支えるようにしていたのでしょう。手のひらの母指球のあたりが痛くなってしまいました。手をかばうためにもなるべく体幹で上半身を支えようとしますが、どうしても腕をつっかえ棒のように伸ばしてハンドルに添えてしまいます。この辺のフォームの乱れはしばらくロードバイクに乗っていなかった影響もあるのでしょう。

まあ、走れないほどのものではないと切り替えて残りの距離をこなしていきます。ここまで来ると後はあっという間でした。気がついたら串本に入っており、目的地の大島の近くにまで来ていました。今回私は串本にある紀伊大島に宿を予約していました。そちらに向かうのですが、厳密にいうと本州最南端は串本の中の潮岬(しおみさき)というところのようです。

ですが、串本市街から潮岬まで標識上では距離が5kmとなっています。ここから5km先の潮岬に行って再び戻ってきて大島へ向かうのはきついと感じました。余力があれば後で行けばいいかと考えてまずは宿を目指すことにします。

串本市街から大島へ向かうにはくしもと大橋を通っていくことになります。この橋の少し手前に大きめのスーパーがありました。今回の宿は素泊まりで料理はついていないのと、島の中に食料品を買うところがあるかどうかわからないためこのスーパーで食材を買っていくことにします。

ここまでの距離がちょうど250kmほどで時刻は4時過ぎくらいです。なんだかんだで休憩時間などを入れて1時間に20kmほど進むペースだったようです。いろいろとトラブルがあった割にはいい方かなと思いました。

スーパーでは串本独自の変わったものが無いかなと思ったのですが、あまりそれっぽいものが見当たりませんでした。ですが、せっかく海の近くに来ているのだから海産物がおいしいだろうと寿司などを購入し、そのほかにもから揚げやウインナーなどの肉類と翌日の朝食用にパンなどと結構いろいろと買い込みました。

さて、食料調達を終えて後は宿に向かうだけとなります。が、意外とここからの道もしんどかったです。というのも、たくさん買った食品の入ったスーパーの袋はとてもリュックには入りません。仕方がないので手に持った状態でハンドルを握って自転車をこぐことになったからです。

重さにして2~3kgはあるのではないでしょうか。そのビニール袋を右手に持ちハンドルを握ります。体が左右に振れると袋も揺れて前輪に当たるため、手の甲にビニール袋を巻きつけるようにして握り、揺れ無いように走る必要がありました。

これだけでも手の甲が痛いのですが、問題は大島の道でした。まず、くしもと大橋が島に行くまでに一回りグルっと一回転しています。当然その構造の橋というのは登りになります。また、島に入ってからも基本的にはずっと登り道が続いていました。

登りでも体を左右に揺らさないようにシッティングで漕ぎ続けます。が、だんだんとつらくなってきてついダンシングを使用としてしまいました。が、立ち上がって漕ごうとするとどうしても揺れてしまい、ビニール袋が前輪へと当たってしまいました。

疲れた体で不自然なシッティングを強要され、手の平はものすごく痛くなってきます。しかも、結構な斜度の登りが続きました。「いつ着くんだ」「早く着いてくれ」と心の中で願いながらどんどんと遅くなるスピード表示を見ながら進み続けました。

そして、ようやく目的地の宿である「リゾート大島」に到着しました。220kmの予定だった1日目は結局255kmを越えていましたが、何とか無事にたどり着くことに成功です。感慨深い気持ちになりながらリゾート大島の受付へと向かいます。本州最南端旅行7へと続きます。

目次

  1. 自転車旅行準備編
  2. 初日に和歌山に入る前にいきなり道に迷ってしまう序盤編
  3. 絶望的な気分に陥るトラブル発生編
  4. バーストを心配しながら田辺へ向かう編
  5. 大きな誤算と刺さる視線編
  6. 椿はなの湯から串本到着編
  7. 貸切状態のドミトリーと露天風呂編
  8. 景色を見ながらの串本から新宮編
  9. 熊野川を眺めながらの快適ライド編
  10. ついに現れた登りとクリート問題編
  11. ライダー宿泊プランと続クリート問題編
  12. 予想外の始まりを告げた3日目編
  13. 目指せ天川村編
  14. トンネルの恐怖と無駄な頑張り編
  15. ラストのゴールと旅行の総括編