本州最南端旅行10:下北山村に向けての登りと向かい風とはまらないクリート編

困難だらけ

本州最南端旅行9からの続きです。

快調に飛ばしてきた168号線を右折して169号線に入ることに決めました。宮井大橋という橋を渡っていきます。ここまでの道もそうでしたが、この169号線は当初通る予定のルートの中に入れていなかったため、どのような道かすらさっぱり知りませんでした。

右折して169号線に入った瞬間に風向きが変わってしまいます。それまでは緩い登り勾配の168号線でも楽に30km/h以上が出ていたのですが、平坦でも30km/hを割るくらいになってしまいます。失敗したかなと思ったのですが、少し走ったところに現れた看板によって考えが変わりました。

その看板というのは「ツール・ド・熊野」というレースについて書いていたのです。日本では数少ないステージレースであり、国際的にも価値のあるUCIポイントも入るということもあり、海外からのチームも多数参加してくるレースとして知られるツール・ド・熊野でこの169号線を使用すると書かれていたのです。通常、自転車のレースのことなどは一般の人はほとんど知らないものですが、串本で泊まったリゾート大島の女性管理人さんと話していたときも、管理人さんからこのトール・ド・熊野の話がありました。しっかりと地域に根付いたレース運営をしているのだなと感心したものです。

「この道をレースで走るのか」と思いながら通ります。おそらく私が走っているスピードの倍くらいの速さで駆け抜けていくのでしょう。私もスピードをあげて見ようかという思いが頭に浮かびましたが、この先の道がどうなっているのか全く分からないためあくまでも疲れないマイペースのスピードで進むことにして走り続けます。

しばらく行くとトンネルが見えてきます。せっかく山に来たのにトンネルを通るのはもったいないような気もしたのですが、トンネルの入り口のそばにある側道を見ると林道のようになっており、かなり道が荒れていそうなのでトンネルを通ることにしました。トンネルを抜けると急に斜度が上がります。ついに登りが始まったかと身構えます。

トンネルに入る前はかなり広い2車線の道路だったのが、トンネルを抜けてからは狭い1車線の道路になりました。しばらく走るといったん広い道に出ましたが、すぐにまた狭い道路に変わります。

169号線の細い登り道

写真のようなひっそりとした道が大好きです。やはり山は少し走るとその表情をコロコロとかえるため走っていても楽しいです。海沿いを走るよりも山のほうが好きだなと再確認しました。

しかし、この道は今回の自転車旅行の中での鬼門になりました。狭い道路で斜度が思ったよりもある道なのですが、予想以上に車が通っていたのです。しかも後ろから大きなトラックが追い越していくのです。車の1.5台分くらいの道幅の登りで大きなトラックが通るため危ないと思い、毎回クリートを外して立ち止まるようにしていました。

ですが、このクリートがはまらなくなってきたのです。もともと1日目の出発時点から少し左足のクリートがキャッチしづらいという感じはありました。しかし、この旅行の間程度ならば問題ないだろうと考えていたのです。が、思った以上にクリートは減っていたようでどんどんとはまりにくくなってきていました。そして、ここにきて限界に達したようです。

細く狭い道でトラックをやり過ごします。後ろに車がいなくなったことを確認してから発進するのですが、登りの途中で砂が浮き、道路には水がちょろちょろと流れているところではまりにくいクリートを一生懸命はめるというのはこんなにも大変なのかと思いました。なかなかはまらないため力づくでペダルを踏みつけるのですが、そうすると後輪が砂でツルッと滑ってしまい、危うく転倒するかと思うこともありました。

クリートがはまりにくいのは左側だけなので、右足のクリートを外せばいいのかもしれませんが、登りを登っていて後ろから車が来たときというのは、無意識に普段外している方の足で動作をしてしまうようです。こんなことなら出発前にクリートを新しいものに交換しておけばよかったと心から思いました。今回はタイヤといい、クリートといい機材面の準備不足の影響がもろに現れてしまっています。

若干テンションが落ちてきてしまいましたが、ずっとその道が続くわけでもありません。少しすると景色が開けてきれいなロケーションが広がっていました。思わず写真を撮ってしまいます。

169号線から見る北山川

さて、このようなきれいな景色に心を癒されつつも、またトンネルが増えてきました。これまで太陽の光を浴び続けていましたが、この辺りの距離のあるトンネルに入ると体が震えるくらい寒くなってしまいました。光が無いとこんなにも寒いのかと思います。これなども車で走っているだけではわからない、ロードバイクならではの自然を肌で感じる楽しみの一つだなと思いました。

ずっと向かい風が続いているのもあり、登りというのもあり、ペースがかなり落ちています。たまに走っていると道の横からガサゴソと音がするときがありました。最初は安易かと驚いていましたが、どうやらイモリが動く音だったようです。しかし、一度トンネルを抜けた先でも音がして、またイモリかなと思ってそちらを見ると猿と目があいました。パッと見は子ザルでしょうか。刺激して悲鳴でも上げられたら親ザルが襲ってこないかとか心配になるものの、追いかけられた時はこんなスピードで逃げ切れられないかもしれないとも思ってしまいました。

いくつものトンネルを抜けたころにはだいぶ疲れが出てきました。どこかで休憩したいと思い、ツーリングマップルを開けるともう少し行くと道の駅があることに気がつきました。何とかそこまで頑張って走り、休憩することにします。ガツンと強烈な登りがあったわけではないのですが、思ったよりも疲れて勾配が緩くともスピードが出ない状態になってしまっていました。

道の駅おくとろ

何とか、道の駅おくとろというところに到着します。この道の駅は北山村というところにあります。この北山村は日本でもかなり珍しいというか、日本では唯一の「飛び地」だそうです。北山村は和歌山県に所属する村なのですが、和歌山県とは分離して奈良県と三重県の間にあるといいます。ちなみにややこしいのですが、この日私が泊まる予定の下北山村や大台ケ原のふもとにある上北山村などは和歌山ではなく奈良県に属するようです。

しばらく、この道の駅のベンチに座って休憩していました。ペットボトル2本分くらいをがぶ飲みして体を休めます。せめてこの風さえおさまってくれればありがたいのになと、道の駅に建てられたのぼりを眺めながら休んでいました。割と長い時間、20分ほどベンチに腰かけていましたが、一向に状況は変わらなさそうだったので再び走り始めることにします。

道の駅を出発しようと自転車にまたがったものの、またなかなかクリートがはまりません。どんどんはまらなくなっていくなと思いながら、無理やり押し込んでようやくはまってくれました。以前、伊勢旅行に行ったときも最終日にクリートがはまりにくくなったことがあったのですが、何度も力を入れてはめようとしていると大腿四頭筋に痛みが出てしまったという経験があります。今回も脚が痛くならないだろうかと心配しながらも走り続けます。

道の駅の先は平坦のような緩斜面が続いているといった感じでした。しかし、向かい風のためスピードが乗りません。心拍数は上がっていないため、出そうと思えば出せるはずですがなかなか力が維持できませんでした。

地図で確認しておいたルートではこのまま169号線を通っていき309号線を経由して下北山村にいく予定でした。しかし、一向に収まらない向かい風に嫌気がさしてきました。そうしたときに、道路に出ている標識に左折しても下北山村に行けるという表示が書かれていました。地図を見ると七色ダムの手前の道で若干ショートカットできる抜け道のような道路があるようです。

ですが、このまま真っ直ぐ行って309号線に行くか、左折するかは悩みものでした。なぜならここを左折した先の道はかなりの勾配の登りが待っているのです。目で見える範囲では12%くらいの斜度がずっと続いているような感じです。

向かい風の中を走るか、それとも登りを越えていくかしばらく立ち止まって考えていましたが、ここは登りを選択することにしました。勾配のある道を休むダンシングを駆使して、体重移動の力だけで登っていきます。

地図で見た限りではこの先にトンネルがあるはずです。ということはおそらくそのトンネルまではこの登りが続くのだろうと覚悟を決めました。ダンシングだけで登ってみようと思い、自転車の上で体重移動を繰り返します。しかし、思った以上にトンネルまで距離があり、しかも勾配がほぼ一定で、それまで上がらなかった心拍数は急上昇していました。結果、ダンシングをあきらめてシッティングに切り替えてしまったのですが、なんともう一つコーナーを抜けた先にそのトンネルが見えてきました。何となく負けた気になってしまいました。

登り切った先にある不動トンネルは2km以上もあるトンネルだったようで、トンネルの中を一気に下っていきました。これまでのトンネルも寒かったですが、下りのトンネルはさらに寒くて頭も痛くなってしまうくらいでした。トンネルを抜けた先は道が2手に分かれていました。どちらからも行けるようですが、左折していくことにします。

ここを左折すると425号線に出るようです。私は今回169号線を通ってきましたが、168号線を真っ直ぐに進んで十津川村のほうまで行った場合はこの425号線へと出てくることになります。せっかくなので最後の一区画だけでも425号線を走っておこうと思ったのです。

地図で見ているとこお425号線は山の中の1本道という感じでしたが思っていた以上に建物がありました。家もあり、役場もあり、小学校もありと、本当に山の中にある村という感じです。そこを越えると池の平公園というところに出てきました。ここはどうやらいろいろなスポーツ施設のある公園のようです。そこから下ると明神池という池がありました。

下北山村の明神池

この池を越えるとつづら折れのコーナーで景色が開けて下北山村が一望できました。2日目の目的地である下北山スポーツ公園が視界に飛び込んできます。このスポーツ公園にあるきなりの湯に泊まることになります。思ったよりも早い午後2時という時間帯に到着することになりました。本州最南端旅行11へと続きます。

目次

  1. 自転車旅行準備編
  2. 初日に和歌山に入る前にいきなり道に迷ってしまう序盤編
  3. 絶望的な気分に陥るトラブル発生編
  4. バーストを心配しながら田辺へ向かう編
  5. 大きな誤算と刺さる視線編
  6. 椿はなの湯から串本到着編
  7. 貸切状態のドミトリーと露天風呂編
  8. 景色を見ながらの串本から新宮編
  9. 熊野川を眺めながらの快適ライド編
  10. ついに現れた登りとクリート問題編
  11. ライダー宿泊プランと続クリート問題編
  12. 予想外の始まりを告げた3日目編
  13. 目指せ天川村編
  14. トンネルの恐怖と無駄な頑張り編
  15. ラストのゴールと旅行の総括編