本州最南端旅行13:天川村を目指して数えきれない山を越える編

道の分からない登りと下り

本州最南端旅行12からの続きです。

1時間ほどかけて走ってきた169号線と別れを告げて309号線を進むことに決めました。今回の旅行は特別ルートを調べていなかったこともありこの道がどのような感じになっているのかは全く分かりません。

が、以前大台ケ原について調べたときにこの309号線にあるトンネルは照明一つない真っ暗なトンネルで通るときはかなり怖いとあった記憶がありました。また、天川村に近いあたりでは渓谷などもあるようです。どんな道なのだろうかとわくわくしながら309号線に入っていきました。

最初に目に留まったのは標識です。この道は天川村につながっているのですが天川村までは25kmほどあるようです。結構長いんだなと思いました。次に目に入ったのが車止めです。1車線の細い道を閉めることのできるようになっているのを見て、冬などは通行止めになったりするのだろうかと思いました。この時は5月ですので問題ないとは思いますが、万が一の可能性として土砂崩れなどで通れないようになってはいないかと心配にもなりました。しかし、後ろから来た車が追い抜いて行ったこともあり、まあ大丈夫だろうと考えます。

走り始めるとすぐに勾配が上がってきます。細い道であたりは木が多い茂っており薄暗く、路面は水でぬれており砂や落ち葉などもあります。もしかして天川村までずっとこんな道が続くのではないだろうなという考えが頭によぎります。

また、自分で考えていた以上に斜度があったために300mほど進んだあたりでどこまでこの勾配が続くんだろうかと思ってしまいました。こんな道が続くのであれば最悪引き返して169号線から帰ることも考えておかなければならないかもしれないと心配になってきます。

最初はシッティングで登っていましたがケイデンスが上がらず、このままでは太ももの筋肉に疲労がたまりすぎてしまうなと感じて途中からはダンシングに切り替えます。と言ってもスピードは出さずに体重移動だけで進む休むダンシングをして登っていきました。この時の休むダンシングは本当に力を抜いてできていたようで、登りながら心拍数を見ているとおおよそ140以下に収まっていました。いまだかつてこんなに心拍数を上げずに登れたことはなかったのではないでしょうか。

しかし、心拍数が上がらないくらいゆっくりと登っているということもあり、道の横に100m間隔で出る標識を見てテンションが下がってきてしまいました。なかなか次の100mにたどり着かないのです。このペースで25km先の天川村までたどり着くのにいったいどのくらいの時間がかかってしまうのだろうかと思いながらペダルを回し続けます。

「やっぱり引き返そうか」「いや、もう少し進んでみよう」と同じことを何度も考えながら進んでいき、3kmほど登り続けたあたりでしょうか。ようやく道路を覆うように生えていた木が減ってきて、明るい中を走ることができるようになってきました。ここらあたりでようやく勾配も緩やかになってきたので、ずっと続けていた休むダンシングをシッティングに切り替えました。

ずっと登り続けていますが、このまま天川村まで登り続けるということはないはずです。どこかで登りから下りに切り替わるはずで、おそらくはこの309号線に唯一ある照明のないトンネルを越えれば下りになるだろうと予想していました。ちょうど中間地点にトンネルがあるとすれば12kmくらい登ればいいのかなと思っていました。しかし、先ほどからよくなった展望を見ているとあたりはすべて山になっています。いったい309号線はこの山のどこを越えていくんだろうと思っていました。

すると4kmを越えたあたりでしょうか。視界の端にちらりと白い物体が見えて気がしました。はっきりと見えたわけではありませんでしたが、瞬間的に「あれはガードレールだ」とわかりました。どの辺に見えたのだろうかと思い、あたりを観察しながら走るとやはりガードレールがありました。私がいる山を3つくらい越えて、さらにその右手に2つほどの山を越えたところにあります。

それまでは辺りに見えていた山のどれかを越えて天川村に行くんだろうと思っていましたが、それは間違いだったようです。向こうのほうに見える山にガードレールがあるということは、私のいる道もそこに通じているのでしょう。そうであれば、どれかの山を越えるのではなく、この辺り一帯に見えている山々をすべて経由して天川村へとたどり着くのでしょう。よくもまあこんなところに入り込んできてしまったなと思いました。

勾配は緩くなったままですが、どこでまたきつくなるかわからないので軽いギアのまま疲れないようにのんびりと登っていきます。しばらく行ったところで、向こう側からロードバイクが下ってきました。あいさつを交わして、ロードバイクで通っている人がいるのならばなんとかなるんだろうと思うことができ、少し気持ちが落ち着きました。

その後は勾配は緩いまま登り続けます。8kmほどを過ぎたあたりになってくるとそれまでとは変わった光景が見られました。序盤よりは広くなった道路の路肩に車が駐車してあるのです。こんな山の中に何台も車が停まっており、いったいここになぜ停めてあるのだろうかと思ってしました。

そして、もう少し進んだ10km地点でトンネルが見えてきました。予想よりも近い距離にあったので「もうトンネルについたのか」とホッとしました。事前に得ていた情報通りこのトンネルには全く照明がありません。しかも、距離が長いのに真っ直ぐに掘り進めたのか遠くの方では出口らしき光が見えていました。この光が逆に曲者で、走っても走っても出口が近づいてこないような感覚に襲われて、しかもトンネルの中なので寒くて体がブルブルと震えるのでちょっとした心霊スポットにでもいるように思ってしまいました。

行者環トンネル

ようやくこの「行者還トンネル(ぎょうじゃがえりとんねる)」をクリアしました。トンネルの出口を出てみてびっくりします。なんと出口のすぐ横は駐車場になっており、たくさんの車が停めてあったのです。どうやらここからは大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)という世界遺産の一つに行くことができるようで、そのための車だったようです。先ほどの道に停めてあった車もきっとここに行くためなのでしょう。この日は土曜日だったため、ほぼ満車になっていたようです。

さて、私は止まらずに先へと進むことにします。予想していた通り、トンネルを抜けた先は下りに切り替わっていました。おそらくこの感じだと天川村まで下りばかりなのではないかなと思いました。これならば登りの途中で勾配が緩くなったところからはもう少しギアを重くしておいてもよかったかもしれません。

しかし、下り始めて少しして気を引き締めなおしました。対向車がそれなりの頻度で登ってくるわりには道が細く1車線しかないクネクネ道で危険そうな道だったからです。下りの勢いに任せてスピードを出した状態で先の見えないコーナーを曲がったら対向車が来ていた、というシチュエーションが容易に想像できます。こういう道は私にとっては苦手で、危険度が高いので安全最優先でゆっくりと下っていきました。

下りの直線区間で勝手にスピードが上がってしまうので、しっかりと下ハンを握ってブレーキをかけてからコーナーに侵入していきます。思った以上に神経をすり減らすなと感じました。自分の中ではかなり注意していましたが、それでもヒヤリハットが2回ほどありました。

1つはコーナーでかなりボコッと突き出したグレーチングがあり、前輪がガツンとした衝撃に襲われたことです。もう少しスピードを出していたらパンクしていたかもしれません。もう一つはコーナーを曲がった瞬間にスピードを出した車が近づいていたこと。これもかなりスピードを落としていたので何ともなかったですが、怖かったです。

ビクビクとしながら下り続けているとみたらい渓谷のあたりまで来ていました。このあたりは紅葉がきれいなところで有名なようです。時期ではありませんでしたが、渓谷を見に歩いていくのか歩行者が多数みられました。天川村までのラスト2kmほどは平坦に近い区間も増えてきました。

そして、ようやく天川村に到着しました。309号線と21号線が交わる交差点のところに個人経営のコンビニのような店があったのでそこで休憩することにしました。トンネルからおおよそ15kmほど下りっぱなしでしたが、時間は40分もかかっていました。あまり快適な下りとは言えず、ロードバイクでは少々通りにくい道だったようです。

前日の補給不足の反省もあり、このコンビニでパンやおにぎりを多めに買い、ベンチに座って食べながら地図を広げます。食事をしながら、ここからどんなルートを通って帰るか考えることにしました。本州最南端旅行14に続きます。

目次

  1. 自転車旅行準備編
  2. 初日に和歌山に入る前にいきなり道に迷ってしまう序盤編
  3. 絶望的な気分に陥るトラブル発生編
  4. バーストを心配しながら田辺へ向かう編
  5. 大きな誤算と刺さる視線編
  6. 椿はなの湯から串本到着編
  7. 貸切状態のドミトリーと露天風呂編
  8. 景色を見ながらの串本から新宮編
  9. 熊野川を眺めながらの快適ライド編
  10. ついに現れた登りとクリート問題編
  11. ライダー宿泊プランと続クリート問題編
  12. 予想外の始まりを告げた3日目編
  13. 目指せ天川村編
  14. トンネルの恐怖と無駄な頑張り編
  15. ラストのゴールと旅行の総括編