大山周回温泉旅行7:苦手意識をつけないためのトラウマ化防止ライド編

再チャレンジ

大山周回温泉旅行6からの続きです。

余裕だと考えていた大山を回るツール・ド・大山のコースは考えていたよりも手厳しく、なめてかかった私はコテンパンに打ちのめされてしまいました。

ハンガーノックに陥り、脚が全く動かない中で考えていたことは「もう大阪に帰ったほうがいいのではないか」ということでした。その後、温泉につかりゆっくりと休養をとることによって少し冷静さを取り戻し「せっかく来たのだからもう少しだけでも走って行こうかな」と考えが変わりました。しかし、その時も「思った以上に体力がないから、どこか坂の少ない短い距離のコースでも走るだけにしておこうか」と考えていました。

そんな弱気なことを考えていましたが、ここでふと頭の中にとある漫画のエピソードが頭に浮かんできました。「宇宙兄弟」という宇宙飛行士について書かれた話です。ある一人の宇宙飛行士が月面で事故にあい、何とか一命を取り留めたものの、その後地球に帰還してから宇宙服を着るだけでパニック発作が出てきてしまう症状が現れてしまったという内容です。

宇宙服を着ることができなければ再び宇宙に行くことすらできないため、いろんなトレーニングで回復を目指しますがなかなか元通りにはなりません。それを見ていたひとりのベテラン宇宙飛行士が「本当ならば月面で事故にあった後、すぐに宇宙服を着てもう一度月面に出るべきだったんだ。過保護に地球に帰還するまで宇宙空間に出ることすら禁止されていたからここまでひどくなってしまった。すぐにリハビリをしていれば、ここまで大事にはなっていなかっただろう」と指摘するシーンです。

何となく、このシーンを思い出して、これは自転車にも当てはまることなのかもしれないなと思いました。ロードバイクにまたがっただけで発作が出るようなトラウマではないですが、私の今までの経験で、始めていくコースで大変な目にあった場合はその後再びそのコースを走るのは無意識に避けてしまうケースが多いように思います。

ちょっと考えただけでも、高野山や金剛トンネル奈良側、紀ノ川広域農道、阪奈道路などいくつものコースが頭に浮かびます。どれも初めて走った時が非常にしんどく感じた場所なのですが、その後走って普通に走れていても、無意識下で苦手意識が働いているように感じるのです。今回ハンガーノックになって、コーナー一つをクリアするたびに足をついてしまうことになったこのツール・ド・大山のコースもこの苦手意識がついてしまうのではないかと感じました。

もしここで、楽なコースを走って大阪に帰るようなことがあれば再び大山に来ることが無くなってしまうような気がします。また、せっかく自転車で走りに来て苦手意識を植え付けて帰ることになるというのもさびしい話です。そこで、まだ心の傷が浅いうちに再び同じコースを走って苦手意識がつかないようにしようと決めます。楽しく走って、楽しい記憶で初日の記憶を塗りつぶそうということです。

というわけで、今までの自転車旅行にはなかった「自転車旅行で同じコースを複数回走る」という初めての試みを行うことにしました。トラウマを予防するのが目的ですが、果たして同じところを短期間にもう一度走って果たして楽しいのだろうかというのも若干心肺ではありましたが。

さて、走り始める前に頭の中で考えをめぐらせます。まず、第一に考えなければならないのは「自分の状態」についてです。

今年は5月末にでも自転車旅行に行こうと考えてそれに合わせて体力作りをしていました。そのため、5月上旬には高野山を含む200km以上で獲得標高3000m以上のコースも走っていました。が、結局5月には自転車旅行には行かず、その後少し気が抜けて週に1回ローラー台をするか、堺浜1時間走をするかくらいの運動量になっていました。

しかし、自分の中ではそれでも体力は維持できているだろうと考えていたのです。1回目のツール・ド・大山ライドでそれが間違っていたということに気づかされました。

自分の頭の中であった現在の自分のコンディションは「中の下」くらいだろうと考えていたのを、1回目のライドを振り返って見直してみると「下の中」くらいではないかと大幅に下方修正することになりました。この状態でできる走り方で走るしかありません。

まず、第一にダンシングは禁止することにしました。ダンシングしている時のフィーリングが非常に悪く、全然前に進む推進力になっていないように感じていたのと、走り終わってから膝に軽い痛みが出ていたことを考えて基本的には全部シッティングで走ることにします。

次に登りのペースについて。1回目は最初は15km/hほど出していたのが、中盤からは10km/hを割り込み始め、最終的には5km/h台まで下がりきってしまっていました。考えてみれば平坦しかない堺浜かローラー台しかしていなかったので、登りを走ること自体久しぶりで体もうまく使えていなかったように思います。今回は序盤から10km/hを目安にして、登り区間はインナーローを最初から使ってしまおうと考えました。

さらに、下りについても考えます。前回は最初はアップダウンなどの下り区間ではアウターに入れてしっかりと踏んでいました。しかし、途中からは疲れが見え始め、下りを休もうと脚を回さなくなってしまっていました。これも改めます。下り区間では軽いギアに入れて負荷をかけないようにクルクルと足を回して疲労物質を除去しながら走ることを心がけることにしました。

最後に心拍数について。前回はコースの道をきちんと確認しておらず、サイコンに取り込んだルート表示を見ながら走っていました。そのため、走行中の心拍数などはほとんど見ていませんでした。今回は一度走っているのでルートは頭に入っているため、サイコンはルート表示はせずに心拍数などの数値を出して走ることにします。今の状態を下の中くらいだとした場合、心拍数は150台でも高いくらいだろうと考えて、基本140台で走ることにしました。

これらの条件を守って走れば失速せずに走ることができるだろうと考えて、朝5時に目を覚まして朝食を食べ、6時ジャストに出発することにしました。

2回目の早朝の大山

前回も大山の写真は撮りましたが、この日の朝も再びきれいな景色が見られたので写真を撮ることにします。ちょうど写真を撮り終えて走り出そうとしたときに、犬の散歩をしていたおじいさんに「おはよう、頑張ってね」と声をかけてもらいました。あいさつを返して走り始めます。

もう一度ツール・ド・大山のコースを走るにあたって一番心配だったのは、初日のハンガーノックの影響で脚が動かなかったらどうしようかということでしたが、思ったほどダメージは残らなかったようです。特に嫌な感じもなく走れていました。

スタートしてしばらくすると長居登り区間が始まります。何も考えずに走っていると最初に考えていた10km/hというペースを越えてしまうようでした。そのまま行こうかとも思いましたが、最初に決めたように10km/hペースに抑えて走ることを心がけます。

登りながら、「そうだ、きちんと補給にも気を付けておかないと」と思い、水分をとろうとボトルに手を伸ばしました。が、ボトルをつかめずに空振りを繰り返します。おかしいなと思い、下に目を落とすとなんと驚いたことに用意していた2本のボトルがありませんでした。思い出してみると、宿でボトルに水を入れた後、そのまま蛇口のそばに置きっぱなしにしてしまっていたようです。

さすがにこれから数時間も山の周りを走ることになるため、ボトルが無ければ自殺行為と同じになります。仕方がないので取りに帰ることにしました。不幸中の幸いで、早めに気がついたおかげで、宿に取りに戻って段階でのタイムロスは20分ほどでした。

取りに帰っている間、これで「もういいや、走るのはやめよう」と考えてしまわないだろうかと少し心配していたりもしました。が、取りに戻った時には「きっと神様が走る時間なんか気にせず、ゆっくりと走りなさいと忠告してくれたんだろう」とかなんとか考えるくらい心に余裕があったため、すぐにまた走り始めることができました。6時20分に再スタートを切りました。次回へと続きます。