オリンピックのロードレース競技に出場する難しさについて

出場の可能性

2020年には東京でオリンピックが開催されます。まだまだ先の話だと思って特に気にしていませんでしたが、ふと疑問に思ったことがありました。それは日本人のロードバイク選手は東京五輪のロードレースに参加できるのかどうかということについてです。

簡単にネットで調べてみた限りではオリンピック開催国が無条件で出場できる開催国枠はロードレースにはなさそうなので、まずは日本がオリンピックへの出場枠を確保する必要がありそうです。では、どの国が何人ロードレースへ出場できるのかについて、前回開催されたロンドンオリンピックを調べてみました。ちなみに調べたのは男子についてであり、女子ロードレースはまた出場枠が違ってくるようです。

まずはロードレースそのものの出場人数ですが、ロンドンオリンピックでは145名が参加できると決まっていました。この人数から各国の出場枠が決まってきます。

出場枠を決めるには基準1と基準2が存在します。基準1ではUCIポイントが重要になり、基準2では各大陸選手権大会の順位が重要になります。

まずは基準1について。これはUCIポイントをもとにワールドツアーや各大陸ツアーの国ランキングを見ていくことになります。

UCIというのは国際自転車競技連合という組織のことで、この組織が世界中にあるレースにUCIポイントを設けており各レースでの順位によって選手ごとにポイントが加算されていくようになっています。例えばツール・ド・フランスのようなステージレースの総合優勝選手には何百ポイントも入れば1日で勝敗を決めるレースでは何ポイントというようにレースによっていくつポイントが入るようになるかは異なってきます。このポイントはそれぞれの選手個人に加算されるのですが、オリンピックへの出場枠で考えるときにはその選手が所属する国でポイントを合算してランキングにして判断するようです。

UCIワールドランキングの国ランキングが1~5位までは各5名ずつ、11~15位までは各4名ずつ計70名が出場できるようになります。

上記とは別に各大陸ツアーでのポイント(アフリカ・アメリカ・アジア・オセアニア・ヨーロッパ)での国ランキングでも出場枠が配分されます。アフリカツアーからは5名、アメリカツアーからは15名、アジアツアーからは9名、オセアニアツアーからは2名、ヨーロッパツアーからは38名が出場することになり、各地域で人数が違ってきています。

当然日本はアジアツアーでのポイントが必要になり、アジアツアーでの国ランキングで1位ならば3名、2~4位ならば各2名となっているようです。

この基準1で139名の出場者が決まります。

次に基準2の各大陸選手権大会ついてです。これはアフリカ、アメリカ、アジアの3つがあります。この3つの大陸選手権大会で1~2位の選手の所属する国に各1名ずつ出場枠が配分されることになります。つまり日本でいえばアジア選手権で1位と2位をとれば2名が出場できるということです。

この基準2で計6名、基準1と合わせると145名の選手の出場枠が決定します。

あくまでもこれはロンドンオリンピックの基準であり、変更になる可能性もあるのですが、これをもとに日本人が出場枠を確保できるか見てみましょう。

まず基準2については非常に分かりやすいでしょう。オリンピックの開催される前年のアジア選手権でいかに1位と2位をとることができるかが重要になります。この場合3位では意味がないことになり厳しい戦いになるでしょうが決して無理なことはないでしょう。

問題は基準1についてです。現実的に考えるとUCIポイントのワールドランキングで日本が国ランキングの15位までに入るのは無理でしょう。そのため、アジアツアーでUCIポイントを獲得してアジアツアーでの国ランキングで最低でも4位までに入る必要があります。問題はこの部分にロードバイク界のいびつな構造があるところです。

ロードバイクの世界ではアジアはまだマイナー競技でしかなく、実力のある選手は当然活躍の場を求めてヨーロッパに行くことになります。現状での日本人選手でいえば新城選手や別府選手などがそうでしょうか。しかし、この実力のある選手はUCIプロツアー選手として日々戦っており、そのような選手は規定によりアジアツアーなどの各大陸ツアーのポイントをとることはできない決まりになっています。

ということはアジアツアーのポイントはプロツアーに参加していない日本人選手が取得していかなければいけなくなります。が、ここにも問題があります。それはロードレースが個人の戦いではなくチーム戦だということです。

基本的にレースで優勝するためにはそのチームで一番実力のある勝てる可能性のある選手をエースとして、そのほかのアシスト選手が優勝を手助けするためのサポートへとまわることになります。チームとしては何とかエース選手を勝たせたいわけです。するとどうなるか。

日本にあるチームにも関わらず海外から獲得した外国人選手をエースとして日本人選手をアシストへと回すことになるわけです。強い選手を周りがきちっとサポートして優勝を重ねていけばそのチームとしては実績ができスポンサーもつきやすくなります。しかし、UCIポイントはレースで上位に入った選手にしか加点されません。当然ポイントをとることができるのはその外国人選手であり、アシストに回った日本人選手には全く入りません。

そうなると日本のチームがアジアで優勝を重ねてもアジアツアーの国ランキングでは4位までに入ることができないという結果になってしまうのです。出場枠のことを考えると日本人をエースに据えてポイントを獲得する必要があるのですが、それをして優勝回数を減らしてしまうとそのチームとしては成績が下がってスポンサーがつかなくなるという事態も考えられるのでなかなか難しい問題のようです。

ちなみに去年のアジアツアーの国ランキングで日本は5位でした。のんきに構えていられる余裕はなさそうです。

また、別の問題もあります。それは出場枠を確保してからの話です。

アジアツアーで日本人選手が必死になって頑張って出場枠を獲得できたとします。仮に2名確保できたとします。そうするとオリンピックに誰を出場させるかを決めねばなりません。当然少しでも勝つ可能性の高い実力のある選手が候補に挙がります。

そう、実力のある選手はヨーロッパのプロツアーで活躍している選手です。つまり、UCIルールによってアジアツアーポイントを獲得できないプロツアー選手がアジアツアー国ランキングで獲得した出場枠で出場することになる可能性が高いのです。プロツアーで活躍している人数にもよりますが、アジアツアーでポイントを獲得した選手本人は出られない可能性もあります。

こうしてみるとほかの競技よりもオリンピックに出るというのは不確定要素が多く難しそうだなと思いました。今の若い選手がオリンピックに出場したいならば実力をつけてヨーロッパに出てプロツアーで頑張りつつアジアに残った日本人選手の活躍を祈るか、あるいはアジアに残ってアジアツアーで活躍しまくり、かつアジア選手権で優勝でもして実力をアピールすることになるのでしょうか。どちらにしても個人の力だけではどうにもならず、ロードバイク界全体として一丸となって頑張る必要がありそうです。