本州最南端旅行11:自転車には厳しすぎるライダープランの宿泊とクリート問題編

予想外の出来事

本州最南端旅行10からの続きです。

2日目の走りも終えてようやく目的地である「きなりの湯」に到着しました。2日目はここで宿泊することになります。なぜこのきなりの湯を選んだかというと、ここには「ライダープラン」というものがあり、バイクや自転車旅行者に限り特別に安く泊まれるということだったからです。素泊まりでバンガローに2500円という金額だったので事前に予約をしておいたのです。

しかし、到着したのが2時15分ほどという思った以上に早い時間帯でした。もしかして、チェックインまでまだ時間があるかもしれないと心配になりましたが、予約したときに送られてきていたメールを見ると2時からチェックインが可能とあり、さっそく受付に行くことにします。

が、このきなりの湯はスポーツ公園になっており、思った以上に敷地が広くどこが受付なのかが分かりませんでした。とりあえず目に留まった総合案内所と書かれた建物に入っていきます。そこには受付があり、部屋の予約をしていた人がいたのでここで合っているだろうと思ったのですが、バンガローなどのキャンプ系の予約の人は一番奥の建物に受付に行ってくれと言われます。この時、受付の人に「バンガローの予約ですか?え?自転車で来られたのですか?」と言われたことが気になりました。自転車用のプランを用意していたのはそっちではないかと思ったのです。

一度その建物を出て、一番奥の施設に移動します。ここの受付で手続をすることになりました。ちょうど受付で私に当たった中年男性の人は不慣れだったのか、えらく時間がかかります。ライダープランなのに正規のバンガローの金額(7000円以上するようです)を請求したり、プランについている温泉入浴券を渡してくれなかったりと、いろいろありました。

しかし、そんなことがどうでもよくなる一言が飛び出します。「バンガローまでは一度このきなりの湯を出て、この登りをずっと登って行ってください。かなり遠いので大変ですよ」と。

ここに着いた時点でこの日のライドは完全に終わったと思っていた私の体はここからバンガローまで移動するのがものすごくつらかったです。距離にしてなんと4kmも離れたところにバンガローがあったのです。しかも、そこまでの道はすべて登っているというから余計につらい。

さらに受付で鍵や入浴券のほか、注意事項などが書かれた何枚もの紙を手渡されていました。とてもリュックのスペースには入りきらなかったためビニール袋に入れてもらうことにしましたが、本当にただのビニールでレジ袋のように持ち手が無いため手で鷲掴みにしたままハンドルを握る必要がありました。1日目の食料を入れたレジ袋も重くて大変でしたが、今回のように軽すぎる袋は揺れやすく、前輪に当たってしまうため、いつも以上に体も車体も揺らさないように登る必要がありました。「まだつかないのか」とずっと思いながら登っていくことになりました。

平成の森から見たきなりの湯

バンガローやコテージのあるところから受付のあるところを見ると思った以上に登ってきていたようです。このライダープランというのはオートバイ用で後から自転車の人も受け入れようということで始めたのかなと思いました。何がきついかというと、もらった入浴券を使える温泉は下の施設にしかなく、また、食事や買い物ができるのもの下の施設だけだということです。もう一度、ここを下って温泉につかってから汗だくになって登ってこなければならないのかと考えざるをえませんでした。

とりあえず、バンガローに入ることにします。3人定員のバンガローですが、一目見て「狭いな」と思ってしまいました。コテージなどとは違い本当に寝るだけの場所のようです。1人なので荷物を広げてしばらくのんびりすることにしました。

このバンガローがあるところには有料ですが温水シャワーがあります。もう温泉はやめてここでシャワーで済まそうかとも思いましたが、ここには食べ物が一切手に入らないためどうしても下まで行かなければならないという問題があります。と、ここにきてようやく食べ物について意識が向いてきました。

「今日何食べたっけ?」と思ったのです。思い返せば朝に食事をして走り始めてから口にした食べ物と言えば熊野川の道の駅で食べたご飯だけです。あれも量は大したことはなかったので700kcal程度ではないでしょうか。2日目のライドでは150k弱なので、これだけでも足りないのですが、1日目には255kmを走って7500kcalを消費していることを考えるともっと補給をしながら走るべきだったことに気がつきました。途中から向かい風の中、スピードダウンしてしまっていましたが、後から考えるとエネルギーも足りていなかった面もあるかもしれません。

やはり降りて行ってカロリーを確保しておく必要があると判断しました。ついでに温泉にも入ります。温泉に入った後にリュックを背負って登ると背中が汗だくになるため、ここであらかじめ着替えて荷物なしで下ることに決めました。

が、下ろうとしてさらに問題が発生します。2日目の登りに入ってからはまりにくくなっていた左足のクリートですが、なぜかこの時に全くはまらなくなってしまったのです。10分くらいクリートをはめようとして頑張っていたのではないでしょうか。微塵もはまる気配がありません。頭が真っ白になってきました。こんな山の中でクリートを売っている店もあるはずもなく、さらに明日も走る必要があります。どうしようか途方に暮れたのですが、問題を先送りにして先に風呂に入りに行くことにしました。冷静に時間をかけて考えようと思ったのです。

クリートがはまらないので左足はだらんとさせて下っていきます。全部下りっぱなしだったのでここは問題なしで、きなりの湯にたどり着きます。自転車を停めて中に入っていきました。時刻は4時台という比較的早い時間帯の割には多くの人が来ているようです。先にシャワーで体の汗と汚れを落としてから湯船につかります。が、前日の日焼けのダメージがまだまだ残っているようで右脚がお湯に触れるとひどく熱く感じてしまいます。幸い、一番端にあるぬるめの湯船が空いていたので、右脚だけお湯から出すような行儀の悪い入り方をして体を温めました。

ゆったりとした時間を過ごしてから、お風呂を上がります。その後、マッサージチェアが開いていたので少し試してみました。機械でゴリゴリされた感じではどうも自覚していなかった腰の筋肉に疲労がたまっていそうな感じでした。

さて、その後夕食をとることにします。温泉施設内にもレストランがありました。しかし、メニューを見ているとパスタなどが中心で、正直どこにいても食べられそうなものしかなかったのでほかの店を見てみることにします。一度温泉施設を出てロードバイクに乗りますが、ここでもクリートははまりません。そのまま、片脚ペダリングで移動してお店を探してみました。

まず、食事にする前に明日の食料の調達を済ませます。ここにはコンビニのような形式でJAが店を出しているのでそこでパンやおにぎりなどを買い込みます。店を出て改めてJAの看板を見ると営業時間が0:00~0:00までとなっていて驚きました。こんなところでも24時間営業をしているようです。

さて、あまり飲食店が無かったのですが一件の居酒屋さんがありました。きれいなスポーツ施設と温泉設備のそばにある割には昔ながらのお店という感じです。個人的にはこういう下町にありそうなお店が好きだったのでここで食べることにしました。

店に入ると猫が食事をしていました。耳の手術をしてカラーを巻いている猫の様子を近所のおばさんが調子どう?と尋ねながら撫でています。飲食店としてどうなんだと思わなくもないですが、アットホームなところだなとも思いました。とりあえずカウンターに座ってメニューを見てとんかつ定食を注文します。

料理が出てくるまでスマホを使って、クリートが売っていそうなお店がないか調べてみます。ですが、やはりこの辺りにはありません。頑張って片足で山を越えて何とか街にまで行かないといけないかもしれないと思いました。それか使えないクリートを外してペダルを漕ぐか。それもシューズの底がツルツルで滑って危なそうだなとも思います。今回の旅行は本当に準備不足がまずかったと反省させられました。

とんかつ定食が出てきたらスマホを置いて食事をしながら店主のおっちゃんと話をしていました。お決まりのどこから来たのなどから自転車の話になり、そういえば今度熊野でレースがあるよというと、そういえばそんなことが書いてあったなと言います。熊野のレースではないかもしれませんが、かつてはこの施設の前の169号線でも自転車のレースをしていたよと教えてもらいます。ちょうど、目の前がカーブになっており、大集団が落車を起こしていたといいます。あんなに人の上に人が重なっているのは初めて見たよとも言っていました。

ほかにも、土曜日になるとここの駐車場にロードバイクを積んだ車が集まって20人くらいでどこか走りに行っているとか、東京からこの奈良の山奥まで学生がママチャリでやってきたなどいろいろな話をしていました。その間にも私はおかわりをつづけ、卵丼やラーメンなどカロリーになりそうなものを腹に詰め込みます。

1時間ほどゆっくりと食事をしてお腹も膨れた6時過ぎに店を出ることにしました。バンガローが遠いことやクリートのこともあり、かなり気が滅入っていましたが、おっちゃんが最後に「また食べに来てね。待っているよ」と言ってくれた一言が心にしみわたりました。特別なグルメを食べたわけではありませんが、またそのうち来ようと思います。

わざわざ店の前に来て見送ってくれたので颯爽と自転車にまたがって走り出しました。もちろんクリートがはまっていないので姿が見えなくなったところで立ち止まってもう一度クリートを入れるためにあがきます。幸いにも今度は5分ほど粘ると何とかクリートがはまったため、無事にバンガローまでの登りをこなして帰ってくることができました。

バンガローに戻ってきてからはとりあえず明日のためにリカバリーとして散歩することにします。20分ほどうろうろと歩いておきました。今回の自転車旅行では全く頑張らずに楽なペースで走っていることもあり、筋肉痛の心配はなさそうだと感じます。問題はやはりクリートです。

このままでは明日まともに走れないので最後のあがきとして「左右のクリートを入れ替える」という作戦に出ました。左足ばかりでクリートを外したりはめたりしているため、左脚のクリートは右に比べてかなり削れてしまっています。しかし、左右均等に削れているわけではなく微妙に左右差があったことに目をつけました。これなら左足のクリートを外して右に付け替えたら多少はまりやすくなるのではないかと思ったのです。

結果は大成功でした。右に付け替えたクリートははまりづらいものの、10回チャレンジすれば1回ははまるようになったのです。いままで100回やっても無理ではないかという状況だったため、かなりの改善です。信号待ちなどでは今まで通り左足のクリートを外すようにすれば右を外す機会はコンビニ休憩のときくらいですので、これで十分です。クリートの位置もマジックで縁取りしてラインをひいていたので、それに合わせてつけたため膝が痛くなるほどのポジションの変更にもなっていないため、肉体的にも問題なさそうです。

平成の森のバンガローから見えるダム

後はバンガローのそばから見える景色を楽しんだり、中でゆっくりと寝転がってくつろいだりしていました。しかし、9時を過ぎたころに嫌な音を聞きました。お腹からグーッという音が聞こえてきたのです。3時間前に食べたばかりなのにもうお腹が減るということは、まだ体はカロリー不足なのではないかと心配になりました。明日ちゃんと走れるだろうかと思いながら布団に入って眠りにつきます。本州最南端旅行12に続きます。

目次

  1. 自転車旅行準備編
  2. 初日に和歌山に入る前にいきなり道に迷ってしまう序盤編
  3. 絶望的な気分に陥るトラブル発生編
  4. バーストを心配しながら田辺へ向かう編
  5. 大きな誤算と刺さる視線編
  6. 椿はなの湯から串本到着編
  7. 貸切状態のドミトリーと露天風呂編
  8. 景色を見ながらの串本から新宮編
  9. 熊野川を眺めながらの快適ライド編
  10. ついに現れた登りとクリート問題編
  11. ライダー宿泊プランと続クリート問題編
  12. 予想外の始まりを告げた3日目編
  13. 目指せ天川村編
  14. トンネルの恐怖と無駄な頑張り編
  15. ラストのゴールと旅行の総括編